「どうして学校に行けないの!」 「このままだと将来どうするつもり?」
不登校のお子さんに対し、ついカッとなって怒鳴ってしまい、その後に襲ってくる激しい自己嫌悪。
当塾で保護者様がご相談されるよくあるお悩みのひとつです。
実は、不登校の子どもに対して怒ってしまうのは、あなたが愛情深い親である証拠でもあります。
しかし、その感情をぶつけ続けることは、親子関係を悪化させ、不登校を長期化させる原因にもなりかねません。
この記事では、「不登校の子どもに怒ってしまう」心理的なメカニズムと、今日からできる具体的な対処法について解説します。
なぜ、不登校の子どもに「怒ってしまう」のか?

「怒ってはいけない」と頭ではわかっているのに、なぜ止められないのでしょうか。 まずは、あなたの心の中で起きているメカニズムを理解することから始めましょう。
怒りは「二次感情」。正体は「不安」と「愛情」
心理学において、怒りは「二次感情」と呼ばれています。
怒りという感情がいきなり湧いてくるのではなく、その奥底には必ず「一次感情」という別の感情が隠れています
不登校の親御さんが抱える「一次感情」の多くは以下のものです。
- 不安: 「勉強が遅れてしまう」「将来ニートになったらどうしよう」
- 悲しみ: 「せっかく作ったお弁当が無駄になった」「私の育て方が悪かったのか」
- 困惑: 「なんで朝起きられないのに、ゲームはできるの?」「昼夜逆転をどうにかしたい」
- 疲労: 「仕事を調整するのに疲れた」「いつまで続くのかわからない」
これらの「わかってほしい」「どうにかしてあげたい」という強い愛情や心配が、許容量を超えたときに「怒り」という形に変換されて爆発しているのです。
あなたは感情的な親なのではありません。
それだけ必死に、お子さんの未来を案じているのです。まずは「怒ってしまう自分」を責めるのをやめ、「私、すごく不安なんだな」と自分の一次感情を認識しましょう。
一次感情を紙に書き出すことがおすすめです。心が整理されます。
感情的に怒ることで起きる「負のループ」

しかし、残念ながらその「怒り」という表現方法は、お子さんには「愛情」として伝わりません。
不登校解決において、感情的な怒りがもたらすデメリットを直視しておく必要があります。
1. 家が「安全基地」ではなくなる
不登校の子どもにとって、学校という社会で傷ついた羽を休める場所は家庭しかありません。
しかし、親が不機嫌で怒ってばかりいると、子どもは家庭でも緊張状態を強いられます。
心が休まらなければ、再登校へのエネルギーは溜まりません。
2. 子どもが「嘘」をつくようになる
「怒られないこと」が目的になると、子どもは本音を隠すようになります。
「お腹が痛い」「頭が痛い」といった身体症状を過剰に訴えたり、本当は辛いのに「来週からは行く」と実現不可能な約束をしてしまったりします。
これでは、親子の信頼関係が崩れ、支援の糸口が見えなくなってしまいます。
3. 親自身の自己肯定感が下がる
怒ってしまった後、「またやってしまった」と親御さん自身が落ち込み、メンタルヘルスを悪化させてしまいます。
親の不安定さは、鏡のように子どもに伝播します。
不登校の子どもに怒る前に知っておきたい心理学
では、どうすれば怒りの感情を手放せるのでしょうか。 精神論や我慢ではなく、「思考の枠組み」を変えることが最も効果的です。
ここではアドラー心理学の「課題の分離」という考え方を取り入れます。
ちょっとだけ難しいですが、ぜひ最後までお付き合いください。
「学校に行くか行かないか」は誰の課題なのか?
「課題の分離」とは、「その選択によってもたらされる結末を、最終的に引き受けるのは誰か?」という視点で、自分と他者の課題を分ける考え方です。
- 子どもの課題: 勉強をするかしないか、学校に行くか行かないか、朝起きるか起きないか。
- 親の課題: 子どもが安心して過ごせる環境を整えるか、子どもを信頼して見守るか、親自身の人生を楽しむか。
親御さんが怒ってしまう最大の原因は、土足で「子どもの課題」に踏み込んでいるからです。
「私がなんとかして学校に行かせなきゃ」と背負いすぎていませんか?
冷たく突き放すのではありません。
「学校に行くかどうかは、この子が自分で決めて、その結果(勉強の遅れなど)もこの子が引き受けるものだ」と信じて任せるのです。
親ができるのは、子どもが「助けて」と言った時にいつでも手を差し伸べる準備をしておくことだけです。
今すぐできる!怒りが爆発しそうな時の対処法
思考法を変えても、目の前でダラダラしている子どもを見ればイライラするのは人間として当然です。
ここでは、突発的な怒りを抑えるための実践的なアンガーマネジメントを紹介します。
1. 物理的な距離を取る(トイレ・車・カフェ)
イラッとしたら、何も言わずにその場を離れてください。
「ちょっとトイレに行ってくる」「コンビニに行ってくる」と言って、物理的に視界から子どもを消します。
当塾で対応した保護者様の中でも、「仕事に行っている間は関係が良好」というケースがありました。
実は「一緒にいない時間」こそが、お互いの精神衛生を守る特効薬になることもあるのです。
2. 「6秒」だけやり過ごす
怒りのピークは長くて6秒と言われています。カッとなったら、頭の中で数字を数えたり、深呼吸をしたりして6秒間だけ沈黙を守ってください。
売り言葉に買い言葉を防ぐだけで、その後の後悔は激減します。
3. 「You」ではなく「I(私)」で伝える
「(あなたは)なんで起きないの!?」と相手を主語にすると、攻撃的なニュアンスになります。
「(私は)あなたが起きてこないと、生活リズムが崩れないか心配なんだ」と、「私」を主語にして、一次感情(心配・不安)を伝えてください。
これなら、子どもも責められていると感じにくく、耳を傾けやすくなります。
まとめ
不登校の子どもに対して怒ってしまうのは、あなたが今まで誰よりも一生懸命子育てをしてきたからです。
今日からは、以下の3つを意識してみてください。
- 怒りは「心配の裏返し」だと自覚する。
- 「子どもの課題」に踏み込みすぎないよう、境界線を引く。
- 子どもを見張る時間を減らし、親自身の楽しみを増やす。
「学校に行っていない」という事実だけに目を向けると苦しくなりますが、お子さんは家でエネルギーを溜めている最中です。 怒りの感情に支配されそうになったら、「私は私、子どもは子ども」と心の中で唱え、まずは深呼吸を一つ。


