「学校に行かなくなってから、勉強が完全にストップしてしまった」
「中学生なのに、小学生レベルの内容も怪しくなってきた気がする」
学校というレールから一度降りてしまうと、「もう追いつけないのではないか」という絶望感に襲われることがあります。
しかし、断言します。不登校からの勉強の遅れは、正しい手順を踏めば必ず取り戻せます。
むしろ、学校の授業進度に縛られない「自宅学習」は、自分のペースで効率よく学力を伸ばすチャンスです。
この記事では、多くの不登校生をサポートしてきた経験をもとに「不登校の中学生が無理なく勉強を再開し、遅れを取り戻すための具体的な方法」を解説します。
精神的な準備から、具体的な教材選び、そして独学の限界を感じた時の対処法まで。この記事を読み終える頃には、「これなら自分でもできるかも」という小さな希望の灯が見えているはずです。
そもそも、不登校でも高校進学はできる?

勉強方法の話に入る前に、一番の不安要素である「進路」について触れておきましょう。
結論から言うと、不登校であっても高校進学は十分に可能です。
「内申点」と「学力」の関係
公立高校の一般入試では、確かに「出席日数」や「内申点」が影響します。しかし、現在は以下のように選択肢が多様化しています。
- 出席日数を重視しない私立高校
- 学力試験を重視する単位制高校
- 通信制高校(近年、進学実績が伸びています)
- 定時制高校
- 不登校枠(特別な選抜枠)を設けている公立高校
つまり、「全日制の公立高校に、内申点満点で合格する」というルートだけが正解ではありません。今の自分に合ったスタイルで高校に進み、そこから大学進学や就職を目指すルートは無数に存在します。
焦る必要はありません。「今の場所から行ける道」は必ずあります。まずはその安心感を持って、目の前の勉強に向き合ってみましょう。
①勉強を始める前の「環境」と「メンタル」の準備
「よし、勉強しよう!」と思い立っていきなり問題集を開いてもなかなか続かないものです。
まずは土台作りから始めましょう。
1. 部屋を「聖域」にする
不登校中のお子さんにとって、自室は生活の全てです。
しかし、ゲーム機、マンガ、スマホが散乱した状態では、脳が「ここは遊ぶ場所だ」と認識してしまいます。 勉強机の上だけで構いません。
「視界に勉強道具以外が入らない状態」を作ってください。 これは「片付け」というより、「脳へのスイッチ作り」です。
環境が整うだけで、集中力へのハードルは劇的に下がります。
2. 「学校と同じ」を捨てる
学校においては時間を区切って授業を受けるため、無意識に「勉強=机に座って50分間集中すること」だと思っている方が多いですがそうではありません。
学校のカリキュラムは「集団を一斉に動かすためのシステム」に過ぎません。
マンツーマンや独学なら、もっと効率的な方法があります。
- 15分集中できればOK(ポモドーロ・テクニックの活用)
- 寝転がって授業動画を見るのも立派な勉強
- 夜型の生活リズムでも、勉強時間が確保できていれば一旦よしとする
「学校っぽくやらなきゃ」という呪縛を解くことが、家で勉強するうえで大切です。
3. 生活リズムの「固定点」を作る
無理に朝6時に起きる必要はありませんが、「毎日同じ時間に勉強を始める」というリズムは重要です。
例えば、「午後2時からは30分だけ机に向かう」と決めます。
やる気が出なくても、その時間は机に座る。何もしなくてもいいから座る。 これを続けると、脳が「この時間は勉強モードなんだな」と学習し始めます。
②効率的に追いつく「戻り学習」の極意

不登校の中学生が勉強の遅れを取り戻すための鉄則。
それは「勇気を持って学年を戻る」ことです。これを「戻り学習(リターン学習)」と呼びます。
どこでつまずいているかを見極める
例えば、中2で不登校になったとしても、勉強がわからなくなった原因は中1、あるいは小学校の内容にあることが非常に多いです。 「
中学生なのに小学生のドリルなんて恥ずかしい」というプライドは、一旦脇に置きましょう。
- 数学:積み上げ型教科の代表です。「方程式」がわからなければ「正負の数」へ、それが怪しければ「分数の計算(小5・6)」へ戻ります。
- 英語:中2・中3でも、be動詞と一般動詞の区別がつかない場合は、迷わず中1の最初に戻ります。
「薄い問題集」を一冊仕上げる
戻り学習をする際は、分厚い参考書ではなく「一番薄いドリル」を選んでください。
「これなら1週間で終わるかも」と思える薄さのものを1冊やり切る。
その「終わらせた」という達成感こそが、次のステップへ進むための最大のエネルギーになります。
③【科目別】不登校生におすすめの勉強法
全教科を完璧にする必要はありません。まずは優先順位の高い科目から手をつけましょう。
英語・数学(優先度:高)
この2教科は「積み上げ型」であり、一度遅れると独学での挽回に時間がかかります。
逆に言えば、この2つさえ押さえておけば、進学後の学習が非常に楽になります。
- 数学のコツ:わからない問題は5分考えてわからなければ、すぐに答えを見る答えと解説を読んで「理解する」→「もう一度自力で解く」の流れを繰り返します。悩む時間は最小限に。
- 英語のコツ:単語と文法が全てです。教科書の本文を音読するだけでも効果があります。まずは単語アプリなどでゲーム感覚で触れることから始めましょう。
国語・理科・社会(優先度:中)
これらは単元ごとに独立している要素が強いため、興味のある分野から手をつけやすい教科です。
- 理科・社会:動画学習との相性が抜群です。実験動画や歴史解説のアニメーションなどを見て、興味を持つことからスタートしましょう。暗記しようとせず、「へぇ、そうなんだ」と眺めるだけで十分な勉強になります。
- 国語:読解力は全ての勉強の基礎です。問題集を解かなくても、自分の好きな本(ライトノベルでもOK)を読む時間を大切にしてください。
5. 不登校中の勉強に役立つツールと教材
独学のハードルを下げてくれる、優れた教材やツールを紹介します。これらは塾に通わなくても、質の高い学習を可能にします。
動画授業サービス
文字を読むのが辛い時期は、動画を活用しましょう。
- YouTube(とある男が授業をしてみた / 葉一さん): 無料で教科書レベルの内容を網羅しています。板書が美しく、学校の授業よりもわかりやすいと評判です。
- スタディサプリ: 月額制ですが、プロ講師の授業が見放題です。学年をまたいで戻り学習ができるため、不登校生にとって非常に使い勝手が良いツールです。
初心者向け参考書
- 『ひとつひとつわかりやすく』シリーズ(学研): イラストが多く、解説が平易な言葉で書かれています。「勉強アレルギー」を起こしている状態でも、これなら開けるという人が多いです。まずはこのシリーズで基礎を固めるのが鉄則です。
- 『わからないをわかるにかえる』シリーズ(文理): 基礎から標準レベルまでをカバーしており、スモールステップで進められます。
学習管理のコツ
「今日はどこまでやるか」を決めるときは、「ページ数」ではなく「時間」で決めるのも一つの手です。
「2ページやる」だと難問に当たった時に終わりませんが、「15分やる」なら必ず終わります。ハードルを極限まで下げることが継続の鍵です。
6. 親ができる見守りと環境整備のポイント
不登校のお子さんが勉強を再開する際、親御さんの関わり方は非常に重要です。
良かれと思った行動が、逆にプレッシャーになることもあります。
NGワードとOKアクション
- NG:「もっとやればいいのに」「遅れてるんだから頑張らないと」 お子さんは、親御さんが思う以上に自分の遅れを気にしています。正論による追い打ちは、やる気を削ぐ原因になります。
- OK:「5分でも机に向かってすごいね」「今日はここまでやったんだね」 結果ではなく、プロセスを認めてあげてください。「見てくれている」という安心感が、次の意欲を生みます。
親の役割はティーチングではなく「コーチング」
勉強を教えるのは、親御さんの役割ではありません(親子関係が近すぎて喧嘩になりがちです)。
親御さんの役割は、以下のような「環境整備」に徹することです。
- 栄養のある食事を用意する
- 生活リズムを整える手助けをする
- 情報収集をする(良い教材、通信制高校の情報、フリースクールの情報など)
- 第三者につなぐ(必要であれば、家庭教師やカウンセラーなど)
勉強の内容には口を出さず、「困ったときはいつでもサポートするよ」というスタンスで見守ることが、お子さんの自立心を育みます。
7. まとめ:焦らず、自分のペースで再スタートを
不登校中の中学生の勉強法について解説してきました。
- 「学校と同じ」を目指さず、自分に合ったスタイルを探す
- 勇気を持って前の学年に戻り(戻り学習)、薄い教材で自信をつける
- 動画やツールを活用し、独学のハードルを下げる
勉強の遅れは、適切な方法で取り組めば必ず取り戻せます。
そして、誰かに強制されるのではなく、自分の意志で机に向かい、自分で工夫して学んだ経験は、将来社会に出た時に「自走する力」として大きな武器になります。
まずは今日、机の上を片付けることから。あるいは、5分だけ動画を見ることから。 小さな一歩を踏み出し、自分のペースで再スタートを切りましょう。焦る必要はありません。学びはいつでも、どこからでも始められます。

